2026年、東京や大阪を中心に「アパートメントホテル」の開発が相次いでいます。
9月には、アパートメントホテルを展開するSection Lが、東京・赤坂に新たな施設を2028年に開業すると発表しました。
今回のプロジェクトには、Section Lだけでなく、アーバネットコーポレーション、UDS、ケネディクスが参画。
ホテル運営会社、デベロッパー、デザイン会社、不動産投資会社がそれぞれの専門性を持ち寄り、長期的な不動産価値まで意識したホテル開発が計画されています。
しかし、最近アパートメントホテルへの投資を加速しているのはSection Lだけではありません。
三菱地所は新ブランド「WAYPOINT」を立ち上げ、アパートメントホテル事業へ本格参入。
「MIMARU」を展開するコスモスイニシアも2030年3,000室体制を掲げ、新規開発を再び加速させています。
なぜ今、アパートメントホテルへの投資が増えているのでしょうか。
ホテル・旅館・民泊など宿泊施設のM&A・不動産投資を専門に扱うINVESTELの視点から、最新の開発動向とともに、今後のアパートメントホテル市場について考えます。
そもそも「アパートメントホテル」とは?
アパートメントホテルとは、一般的なホテルのサービスと、マンション・住宅の「暮らす機能」を組み合わせた宿泊施設です。
施設によって異なりますが、一般的には、
・キッチン
・冷蔵庫
・電子レンジ
・洗濯機・乾燥機
・リビング・ダイニング
・家具・家電
などを客室内に備えています。
通常のホテルが「泊まる場所」であるのに対し、アパートメントホテルは、
「旅先で暮らすように滞在できる場所」
という性格が強い宿泊施設です。
そのため、1〜2名の短期出張だけでなく、ファミリー、友人グループ、インバウンド、長期出張、ワーケーションなど、複数人・連泊との相性が良いことが特徴です。
一般的なホテルとは何が違う?
一般的なホテルでは、客室面積が比較的小さく、キッチンや洗濯機などを備えていないケースも多くあります。
一方、アパートメントホテルでは客室を広く取り、複数人で一緒に過ごせるリビングやダイニングを設ける施設が多く見られます。
例えば、2026年9月に開業した「MIMARU大阪 心斎橋CENTRAL」は全66室が40㎡超。
キッチン・ダイニング・洗濯乾燥機を備え、最大6名で宿泊できる客室も多く設けられています。
つまり、4人家族が日本を10日間旅行する場合、
「ホテルの2部屋を予約する」
のではなく、
「家族全員で一つの広い部屋に滞在する」
という選択肢になります。
これは、一般的なホテルが十分に取り込めていなかった需要とも考えられます。
なぜ今、アパートメントホテルが増えているのか
背景にある大きな要因の一つが、訪日外国人旅行者の旅行スタイルの変化です。
訪日旅行が成熟するにつれ、東京・京都・大阪を数日で回るだけではなく、一つの都市に複数泊したり、家族やグループで日本を周遊したりする旅行者も増えています。
そこで重要になるのが、
「宿泊人数」と「滞在期間」
です。
4〜6名程度のファミリー・グループが同じ空間に泊まり、洗濯や簡単な料理をしながら数日から数週間滞在する。
こうした旅行スタイルに対して、従来のビジネスホテルとは異なる宿泊商品としてアパートメントホテルが存在感を高めています。
2026年、アパートメントホテルへの参入が一気に加速
特に注目したいのが、アパートメントホテルのプレイヤーが変化していることです。
これまでもMIMARUやSection Lなど、この領域を得意とする事業者が市場を開拓してきました。
しかし現在は、大手不動産デベロッパー、ホテル会社、不動産ファンドなども本格的に参入し始めています。
三菱地所「WAYPOINT TSUKIJI TOKYO」
三菱地所と三菱地所ホテルズ&リゾーツは、2026年4月、東京・築地に「WAYPOINT TSUKIJI TOKYO」を開業しました。
三菱地所グループにとって、新たに立ち上げたアパートメントホテルブランド「WAYPOINT」の第1号施設です。
全52室で、キッチンやランドリーなどを設置。
主にインバウンドのファミリー・グループによる複数泊を想定しています。
さらに重要なのが、三菱地所が「1施設だけの実験」としているわけではないことです。
同社は2030年までに10施設の開業を目標としており、アパートメントホテルを新たなホテル事業の柱の一つとして育てようとしています。
MIMARUは2030年3,000室へ
アパートメントホテル市場の代表的ブランドの一つが、コスモスイニシアグループの「MIMARU」です。
2026年9月には「MIMARU大阪 心斎橋CENTRAL」が開業。
これによりMIMARUは28施設・約1,500室となりました。
さらに同社は、2030年に3,000室体制を目指しており、今後再び新規開発を加速させる方針です。
年間宿泊者の9割が海外ゲスト・家族利用という点からも、アパートメントホテルが一般的なビジネスホテルとは異なる需要を獲得していることが分かります。
Section Lは2028年、赤坂へ
そして2026年9月、Section Lは東京・赤坂で新たなアパートメントホテルを開発すると発表しました。
開業予定は2028年。
溜池山王駅徒歩1分の立地に、23㎡〜58㎡、全50室を計画しています。
注目したいのは、その事業スキームです。
運営:Section L
事業主:アーバネットコーポレーション
設計:UDS
投資:ケネディクス
という形で、それぞれ異なる専門性を持つ企業が参加しています。
ホテルを単純に建設して運営するだけではなく、
「不動産開発×ホテル運営×デザイン×投資」
を組み合わせたプロジェクトになっています。
アパートメントホテルが一つの独立した「投資アセット」として認識され始めていることを象徴する事例ともいえるでしょう。
小規模プレイヤーの開発も活発化
大手企業だけではありません。
2026年には、さまざまなアパートメントホテルが開業しています。
東京では、
「KOKO HOTEL Residence 東京押上」
「AIMA Tokyo Kinshicho」
「AIMA Asakusa East」
「HOTEL EN-YO」
などが相次いで開業。
大阪でも、
「NOVI BY TOPAZ DOTONBORI」
「KABIN Shiro, Regale Collection」
など、新しいアパートメントホテルが誕生しています。
特に興味深いのが、必ずしもホテルを新築しているわけではないことです。
例えば「HOTEL EN-YO」はオフィスビルからホテルへの用途変更。
「KABIN Shiro」は既存ホテルをアパートメントホテルへ転換しています。
つまり、新築だけではなく、オフィス・住宅・既存ホテルなどをアパートメントホテルへコンバージョンする市場も生まれ始めています。
「サービスアパートメント」と「アパートメントホテル」の境界も変わり始める
さらに今後注目したいのが、ホテルと住宅の境界です。
従来のサービスアパートメントは、海外駐在員や長期出張者などを中心に、1カ月以上の中長期滞在を主なターゲットとする施設が多くありました。
一方、現在増えているアパートメントホテルは、1泊から宿泊できる施設も多く、
短期旅行
↓
連泊
↓
中期滞在
↓
長期滞在
までを幅広く取り込もうとしています。
実際、2026年7月には、ビーロットとUnitoが東京・初台で家具・家電付きサービスアパートメント「unito residence SHINJUKU Hatsudai」を開業。
一方、アスコットは2026年6月、大井町に30泊以上から利用できる長期滞在型の「オークウッド大井町トラックス東京」を開業しています。
「ホテル」「サービスアパートメント」「家具付き賃貸」の境界線そのものが変化し始めています。
投資家にとってアパートメントホテルは何が魅力なのか
不動産投資の視点から見ると、アパートメントホテルにはいくつかの特徴があります。
一つは、一般的なホテルとは異なる顧客層を狙えることです。
ファミリー・グループ・中長期滞在者を取り込めれば、1室あたりの宿泊人数を増やしながら、高い客室単価を狙える可能性があります。
また連泊比率が高くなれば、チェックイン・チェックアウトや客室清掃の回数を抑えられる可能性もあります。
一方、客室を広くするため、同じ延床面積でも一般的なビジネスホテルより客室数は少なくなります。
キッチン、洗濯設備、家具家電などの設備投資も必要です。
したがって、
「アパートメントホテルだから収益性が高い」
と単純に考えるのではなく、
ADR
稼働率
平均宿泊人数
平均宿泊日数
客室面積
坪当たり売上
運営費
清掃費
などを総合的に検証する必要があります。
今後は東京・大阪から「地方」へ広がるのか
現在は東京・大阪・京都など、インバウンド需要が強い都市部が中心です。
しかし、今後は地方都市やリゾートエリアにも展開余地があると考えられます。
すでに福岡、沖縄、三重などでもアパートメント型の宿泊施設が開業しています。
特に地方で可能性があるのは、
「一つの都市に長く滞在する場所」ではなく、「地域を周遊するための拠点」
という考え方です。
例えば、
北海道
白馬
箱根
伊豆・熱海
富士五湖
瀬戸内
沖縄
などでは、家族・グループでレンタカーを利用しながら複数日滞在する旅行との相性があります。
広い客室、キッチン、ランドリー、駐車場を備えた施設であれば、「観光するホテル」ではなく、
「地域を旅するための家」
として成立する可能性があります。
地方では空き家・別荘・保養所の再生にも可能性
さらに地方では、新築だけではない展開も考えられます。
例えば、
空き家
古民家
企業の保養所
マンション
社員寮
小規模ホテル
廃業した旅館
などです。
こうした既存ストックを取得・賃借し、複数人・長期滞在に対応する宿泊施設へ再生する。
これは前回取り上げた「空き家×宿泊」の流れともつながります。
都市部では「土地を取得してアパートメントホテルを開発する」。
地方では「既存不動産を取得して宿泊施設へ再生する」。
地域によって異なる開発モデルが生まれていく可能性があります。
今後は「アパートメントホテルM&A」も増えていく可能性
INVESTELが特に注目しているのが、今後のM&A市場です。
ホテル市場では、
開発
↓
運営
↓
収益改善
↓
売却
という投資サイクルがあります。
アパートメントホテル市場でも施設数が増えれば、当然、数年後には売却案件が出てくる可能性があります。
さらに、この業態ではさまざまな取引方法が考えられます。
例えば、
不動産そのものを売却する「不動産売買」。
ホテル運営事業を引き継ぐ「事業譲渡」。
ホテル運営会社そのものを取得する「株式譲渡」。
物件を所有せず、賃貸借契約や運営権を引き継ぐ「運営事業の承継」。
アパートメントホテルが増えることで、宿泊M&A市場にも新しい案件カテゴリーが形成される可能性があります。
小規模ホテル運営会社のM&Aにも注目
もう一つ注目したいのが「施設」ではなく「運営会社」です。
アパートメントホテルは、大規模なフルサービスホテルとは異なり、10室〜50室程度の小規模施設でも成立するケースがあります。
そのため、スタートアップや中小ホテル運営会社でも複数施設を展開しやすい領域です。
例えば、
10施設
↓
30施設
↓
50施設
と運営施設を増やした事業者が現れれば、将来的には大手ホテル会社、不動産会社、ファンドなどによる運営会社の買収も考えられます。
ホテルM&Aというと「ホテルの建物を売る」というイメージがありますが、今後は、
「運営プラットフォームそのものを買う」
というM&Aも増えていく可能性があります。
アパートメントホテルは新しい宿泊投資カテゴリーになるか
2026年の動きを見ると、アパートメントホテルは単なるホテル業界のトレンドではなく、一つの独立した宿泊投資カテゴリーへ成長し始めているように見えます。
三菱地所の参入。
MIMARUの3,000室構想。
Section Lとデベロッパー・ファンドとの共同開発。
既存ホテルやオフィスからのコンバージョン。
そして地方都市・リゾートへの展開。
それぞれを個別のニュースとして見るのではなく、
「日本の宿泊市場が、短期・1〜2名中心のホテルから、複数人・連泊・暮らすような滞在にも対応する市場へ広がっている」
と捉えることが重要です。
まとめ|ホテルと住宅の間に、新しい宿泊市場が生まれている
これまで日本の宿泊市場では、
ホテル
旅館
民泊
賃貸住宅
などが比較的明確に分かれていました。
しかし、旅行者の滞在スタイルが変化することで、その境界が少しずつ曖昧になっています。
ホテルのサービスを受けながら、家のように過ごす。
1泊だけでなく、1週間、1カ月と滞在する。
旅行だけでなく、仕事や生活の拠点としても利用する。
アパートメントホテルやサービスアパートメントの拡大は、こうした「宿泊と暮らしの融合」を象徴する動きともいえるでしょう。
そして施設数が増えれば、
開発 → 運営 → 投資 → 売却 → M&A → 再生
という新しい宿泊資産の循環も生まれます。
INVESTELでは、ホテル・旅館・民泊だけではなく、今後拡大が予想されるアパートメントホテルやサービスアパートメントについても、宿泊不動産・M&A・事業承継という視点から市場を追っていきます。
■宿泊施設のM&A・売買ならINVESTEL
INVESTELは、ホテル・旅館・民泊などの宿泊施設に特化したM&A・投資プラットフォームです。
宿泊施設のM&Aでは、売上や利益、譲渡価格だけでなく、許認可、不動産、運営契約、賃貸借契約、設備、修繕、営業実績など、宿泊施設特有の確認事項があります。
INVESTELでは、宿泊M&Aに精通したアドバイザーが、案件の整理から買い手探索、条件交渉、デューデリジェンス、契約・クロージングまでサポートしています。
「旅館業許可を含めて事業譲渡できるのか知りたい」
「民泊を売却したいが、どのようなスキームが適しているかわからない」
「宿泊施設を取得したいが、許認可まで含めて確認したい」
といった段階でもご相談いただけます。
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