2026年、アジアのホテル投資市場で大きな変化が起きています。
CBREが2026年9月24日に発表した最新レポートによると、2026年上半期のアジア太平洋地域におけるホテル投資額は、
80億米ドル。
前年同期比で21%増加しました。
中でも興味深いのが中国です。
中国本土のホテル取引額は、
前年同期比で2倍以上
に拡大しました。
その背景のひとつとしてCBREが挙げているのが、
4つ星以上のホテルが中国のREIT(C-REIT)の対象になったこと
です。
ホテルの宿泊者が急増した。
ADRが突然2倍になった。
ホテル建設コストが下がった。
という話ではありません。
「ホテルを最終的に誰へ売却できるのか」という出口が広がったことで、投資市場そのものが動き始めているのです。
これは日本のホテル・旅館市場を考えるうえでも非常に興味深い変化です。
今回は、中国で起きているホテルREIT市場の変化から、
「なぜ出口が増えるとホテル投資が活発になるのか」
そして、
ホテル・旅館を将来高く売却するために、オーナーは何を準備すべきなのか
を考えていきます。
2026年、アジアのホテルに「80億ドル」が投資された
CBREによると、2026年上半期のアジア太平洋地域におけるホテル投資額は80億米ドル。
前年同期比21%増となりました。
特に投資活動を牽引したのが、
日本
中国本土
韓国
です。
日本についても、国内外の投資家からホテルへの投資需要が続いています。
JLLの別集計では、2026年上半期の日本のホテル投資額は19億米ドル。
前年同期比75%増となり、アジア太平洋地域を牽引する市場のひとつになっています。
ホテルは今、アジアの不動産投資市場において存在感を高めているアセットのひとつです。
しかし今回、INVESTELとして特に注目したいのは、
中国のホテル投資市場です。
中国ではホテル取引額が「2倍超」に
CBREによると、中国本土の2026年上半期のホテル投資額は前年同期比で2倍以上となりました。
もちろんホテル市場の回復など複数の要因があります。
しかし、投資市場の構造を考えるうえで非常に重要なのが、
C-REITの対象拡大
です。
中国ではこれまで、REITの投資対象はインフラ系資産などが中心でした。
ところが制度が拡大され、
一定条件を満たす4つ星以上のホテルも対象
となりました。
ホテルオーナーや投資家から見ると、これは単なる金融制度の変更ではありません。
なぜなら、
ホテルの「次の買い手」が増える可能性がある
からです。
そもそもREITとは?
REIT(Real Estate Investment Trust)は、日本語では「不動産投資信託」と呼ばれます。
投資家から集めた資金などで、
オフィス
住宅
物流施設
商業施設
ホテル
などの不動産を取得し、そこから得られる賃料や収益を投資家へ分配する仕組みです。
日本にもJ-REITがあり、複数のREITがホテルを保有しています。
ホテル投資においてREITが重要なのは、
大量の資金を持つ「買い手」になり得ること
です。
ホテル投資で重要なのは「誰から買うか」より「誰に売るか」
ホテル投資というと、
「いくらで買えるか」
に注目しがちです。
しかし不動産投資・M&Aでは、それと同じくらい重要な質問があります。
それが、
「最後に誰へ売るのか?」
です。
例えば5億円で旅館を購入するとします。
購入後、
改修する。
ADRを上げる。
稼働率を改善する。
利益を増やす。
ここまではホテル運営の話です。
しかし投資として考えれば、最後には、
保有し続ける
第三者へ売却する
ファンドへ売却する
REITへ売却する
などの出口があります。
つまりホテル投資は、
購入 → 運営 → 改善 → 売却
まで考えて初めて一つの投資になります。
「出口」が増えると何が起こるのか
例えば10億円のホテルを考えてみます。
このホテルを購入できるのが、
個人投資家
だけなら、買主候補は限られます。
しかし、
ホテル運営会社
事業会社
海外投資家
不動産会社
PEファンド
不動産ファンド
REIT
まで買主候補が広がればどうでしょうか。
当然、
売却できる可能性が高まります。
さらに買主ごとに投資目的が違います。
運営会社なら、
「自社ブランドで運営したい」
かもしれません。
ファンドなら、
「3〜5年運営改善して売却したい」
かもしれません。
REITなら、
「長期的に安定した収益を得たい」
かもしれません。
つまり、
買主の種類が増えるほど、ホテルの価値を評価する方法も増える
ことになります。
REITという出口があると「その前の投資家」が動ける
ここが非常に重要です。
REITがホテルを買うから市場が大きくなる。
それだけではありません。
例えばファンドが、
ホテルを10億円で取得
↓
3億円かけて改修
↓
運営改善
↓
NOIを向上
↓
REITへ18億円で売却
できる可能性があるとします。
するとファンドは、
「最後にREITへ売却できる可能性があるから、その前段階のホテルへ投資できる」
ようになります。
つまり出口が増えることで、
その前にいる、
不動産会社
ファンド
ホテル運営会社
再生事業者
も動きやすくなります。
これが投資市場の流動性につながります。
「古い旅館」はREITに売れないのか?
ここからがINVESTELとして考えたいポイントです。
REITが購入するホテルというと、
東京の大型ホテル
有名ブランドホテル
新築ホテル
をイメージするかもしれません。
しかし必ずしもそうとは限りません。
以前INVESTELでも紹介したホテル系REITの保有データでは、50室未満の宿泊施設も複数取得されています。
特に旅館では、小規模施設でもREITの保有対象となっているケースがあります。
重要なのは、
「今の施設がREITに売れるか」
ではありません。
むしろ、
「どうすれば機関投資家が買える状態にできるのか」
という視点です。
REITやファンドが買いやすいホテルとは?
では、どのようなホテルが機関投資家にとって買いやすいのでしょうか。
単純に、
「売上が高いホテル」
だけではありません。
重要なのは、
収益を説明できること
です。
例えば、
ADR
OCC
RevPAR
GOP
NOI
人件費
OTA手数料
修繕費
などが整理されている。
さらに、
過去3年間の数字
を説明できる。
これによって、
「このホテルは今後どれだけ利益を生むのか」
を投資家が分析できます。
① NOIが安定している
REITは一般的に、長期的に安定したキャッシュフローを重視します。
例えば、
2024年:NOI 4,500万円
2025年:NOI 5,000万円
2026年:NOI 5,500万円
というホテルなら、
利益成長を説明できます。
逆に、
2024年:5,000万円
2025年:1,000万円
2026年:6,000万円
というホテルでは、
なぜ利益が大きく変動しているのか
を説明する必要があります。
② 運営がオーナー個人に依存していない
旅館・民泊M&Aでは特に重要です。
オーナー自身が、
予約管理
レベニューマネジメント
採用
清掃管理
仕入れ
接客
をすべて担当している施設では、
オーナーが変わった瞬間に同じ利益を再現できなくなる可能性があります。
買主が欲しいのは、
「今のオーナーだから儲かる宿」ではなく、「オーナーが変わっても儲かる宿」
です。
SOP。
スタッフ。
運営システム。
PMS。
清掃体制。
これらを整備することが重要になります。
③ CAPEXが見える
ホテル・旅館投資では、
「購入価格」
だけを見てはいけません。
購入直後に、
空調交換:5,000万円
外壁:3,000万円
給排水:2,000万円
が必要になれば、
実質的な取得コストは大きく変わります。
そのため、
修繕履歴
設備台帳
将来修繕計画
などを整理しておくことが重要です。
これは売却時のDDにも影響します。
④ 許認可・権利関係が整理されている
ホテル・旅館では、
旅館業許可
建築
消防
用途
増改築履歴
土地境界
借地権
温泉権
など、さまざまな確認事項があります。
特に歴史ある旅館では、
「昔からこの状態で営業している」
だけでは投資家のDDを通らない場合があります。
つまり、
売却直前に整理するのではなく、保有中から「売れる状態」にしておく
ことが重要です。
⑤ 運営会社との契約が整理されている
ホテルでは、
所有者
と、
運営者
が別の場合があります。
例えば、
オーナー
↓
ホテル運営会社
↓
ホテルブランド
という構造です。
この場合、
賃貸借契約
運営委託契約
フランチャイズ契約
などがホテル価値に大きく影響します。
契約期間。
解約条件。
運営報酬。
ブランド変更の可否。
こうした契約条件も投資判断の重要なポイントになります。
ホテル価値は「現在の利益」だけでは決まらない
ここで一つ例を考えてみます。
地方にある40室の旅館。
年間売上:1.5億円
NOI:2,000万円
だったとします。
現在のNOIだけを見れば、大型ファンドには小さすぎるかもしれません。
しかし、
客室改修
ADR改善
インバウンド集客
運営会社変更
人員配置改善
によって、
NOI:5,000万円
まで改善できるとします。
さらに同様の施設を、
5施設
まとめれば、
NOI合計:
2.5億円
になります。
ここまで来ると、買主候補が変わる可能性があります。
「1施設を売る」から「ポートフォリオを売る」へ
これは今後、日本の旅館・小規模ホテル市場でも重要になる可能性があります。
例えば、
30室旅館 × 5施設
をそれぞれ売るのではなく、
同じ運営会社
同じブランド
同じPMS
同じ清掃体制
同じレベニューマネジメント
で運営する。
すると、
「5つの旅館」
ではなく、
「150室のホテルポートフォリオ」
として見ることができます。
投資家から見ると、
1施設への投資
より、
複数地域・複数施設へ分散されたポートフォリオ
の方が投資しやすいケースもあります。
M&Aは「REITに売れるホテルを作る前段階」になり得る
ここにホテルM&Aの役割があります。
例えば、
後継者のいない地方旅館
を、
ホテル運営会社や投資会社がM&Aで取得する。
↓
改修する。
↓
運営を標準化する。
↓
ブランドを統一する。
↓
複数施設を取得する。
↓
ポートフォリオ化する。
↓
ファンド・REITへ売却する。
この流れが成立すれば、
「後継者がいないから廃業する旅館」
が、
「投資対象となるホテル資産」
へ変わる可能性があります。
これは宿泊業界の事業承継を考えるうえでも非常に重要です。
中国のC-REIT拡大から日本が学べること
今回、中国で4つ星以上のホテルがC-REITの対象になったことでホテル投資が活発化していることは、
単なる中国市場のニュースではありません。
そこから見えてくるのは、
「出口市場が整備されると、その前段階の投資も活発になる」
という構造です。
日本にはすでにJ-REITがあります。
しかし、日本全国にはまだ、
家族経営の旅館
小規模ホテル
地方ホテル
民泊
など、
機関投資家が直接取得するには小さい宿泊施設が数多く存在します。
ここに、
M&A
運営改善
リブランド
DX
ポートフォリオ化
を組み合わせる。
そうすることで、
小規模宿泊施設を「投資できる資産」に変える市場
が生まれる可能性があります。
INVESTELが考える「宿泊施設の出口戦略」
ホテル・旅館を購入するとき、
「この施設はいくらで買えるか」
だけを見るのではなく、
最初から次の質問をすることが重要です。
① 誰に売れるのか
個人投資家なのか。
事業会社なのか。
ホテル運営会社なのか。
ファンドなのか。
REITなのか。
② その買主は何を評価するのか
土地なのか。
NOIなのか。
ブランドなのか。
運営力なのか。
ポートフォリオなのか。
③ その状態まで何年かかるのか
3年。
5年。
10年。
④ そのために何を改善するのか
ADR。
OCC。
NOI。
CAPEX。
運営体制。
⑤ いくらで売れば投資が成立するのか
出口価格から逆算して、
現在の購入価格
を決める。
これがホテル投資における、
Exit Driven Investment(出口から逆算する投資)
です。
「良いホテルを買う」から「次の買主が欲しいホテルを作る」へ
2026年上半期、アジア太平洋地域のホテル投資額は80億米ドルまで拡大しました。
日本、中国、韓国が市場を牽引しています。
中でも中国では、ホテルがC-REITの対象に拡大されたことなどを背景に、ホテル取引額が前年同期比2倍以上となりました。
このニュースから見えてくるのは、
ホテル投資市場にとって重要なのは、
「今いくらで買えるか」だけではない
ということです。
そのホテルを、
誰が買うのか。
誰が運営するのか。
どう改善するのか。
そして、
最後に誰へ売るのか。
ホテル・旅館・民泊などの宿泊施設は、
不動産であると同時に、
事業でもあります。
だからこそ、
購入
運営
改善
M&A
売却
まで一体で考えることが重要です。
これからのホテル投資では、
「良いホテルを買う」だけではなく、「次の買主が欲しいホテルを作る」
という視点が、さらに重要になっていくのかもしれません。
■ホテル・旅館・民泊の購入・売却なら「INVESTEL」
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宿泊施設の売却では、
不動産売買
事業譲渡
株式譲渡
など、施設の状況に合わせたさまざまな方法を検討できます。
また投資判断では、
NOI
ADR・OCC・RevPAR
CAPEX
運営体制
許認可
市場データ
売却スキーム
出口戦略
などを総合的に分析する必要があります。
「ホテル・旅館を売却したい」
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INVESTELは、宿泊・不動産・M&A・地域開発などを通じて、地域と宿泊施設の新たな価値づくりに取り組むArkAnd合同会社が運営しています。
運営会社やその他の事業については、ArkAnd公式サイトをご覧ください。
参考資料
・CBRE「Asia Pacific Hotel Investment Gains Momentum on Strong Fundamentals」(2026年9月24日)
・CBRE「2026 Asia Pacific Hotels & Hospitality Performance & Outlook」
・JLL「2026年上半期のアジア太平洋地域のホテル投資額、過去最高の54%増を記録」(2026年8月12日)
・中国C-REIT関連公開情報
・一般社団法人不動産証券化協会(ARES)J-REIT関連資料
※本記事は2026年9月24日時点の公開情報をもとに、INVESTEL編集部がホテル・旅館・民泊、不動産投資、M&A、ホテル運営の観点から独自に編集・考察したものです。個別の施設がREIT・ファンド等の取得対象となることや、将来の売却価格・投資収益を保証するものではありません。