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赤字・老朽化したホテル・旅館でも売却できる?再生型M&Aの評価方法と買い手が見るポイント

「何年も赤字が続いている」

「建物が古く、大規模な改修も必要になっている」

「後継者もいない。この状態で本当に買い手がつくのだろうか」

ホテル・旅館の売却を検討する経営者にとって、赤字や建物の老朽化は大きな不安材料です。

 

黒字施設や高収益ホテルのM&A事例が注目される一方で、

「赤字だから売れない」
「建物が古いから価値がない」

と考え、売却の相談そのものを先延ばしにしてしまうケースもあります。

しかし、赤字・老朽化したホテルや旅館であっても、M&Aや不動産売買が成立する可能性はあります。

なぜなら、買い手が取得するのは**「現在の赤字」だけではない**からです。

土地・建物、立地、客室数、温泉、ブランド、顧客基盤、従業員、取引先、許認可を含む事業基盤などを取得し、

「自分たちが運営すれば、どこまで収益を改善できるか」

という再生後の可能性まで含めて投資判断する買い手が存在します。

 

つまり重要なのは、

「赤字か黒字か」ではなく、「なぜ赤字なのか」。

そして、

「その赤字は、買い手の運営力や投資によって改善できる赤字なのか」

を見極めることです。

 

本記事では、ホテル・旅館・民泊などの宿泊M&Aを専門に扱うINVESTELの視点から、赤字・老朽化した宿泊施設の売却可能性、買い手が評価するポイント、価格の考え方、DD(デューデリジェンス)で確認される事項について解説します。

 

この記事でわかること

◎赤字・老朽化したホテル・旅館でも売却できる理由

◎「売れる赤字」と「売却が難しい赤字」の違い

◎再生型M&Aで買い手が評価するポイント

◎赤字施設の譲渡価格・取得価格の考え方

◎土地・建物価値と再生後収益の考え方

◎老朽化施設で重要になるCAPEX

◎再生案件特有のDD項目

◎売却前に経営者が準備しておきたいこと

 

監修:INVESTEL M&Aアドバイザリーチーム

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件の成約可能性・譲渡価格等を保証するものではありません。実際の評価・取引条件は不動産、財務、法務、税務、許認可、建物状況等によって異なります。必要に応じて弁護士、税理士、不動産鑑定士、建築士等の専門家へご確認ください。

 


1. 赤字・老朽化したホテル・旅館でもM&Aは成立する?

結論からいえば、

赤字=売却できない

ではありません。

 

ホテル・旅館は一般的な事業会社とは異なり、「事業」と「不動産」の両方の性質を持つアセットです。

現在の営業利益が赤字であっても、

土地に価値がある
立地に競争力がある
温泉など希少な資源がある
建物を改修すれば商品力が上がる
ADRを改善できる余地がある
運営コストを改善できる
ブランドを変えれば集客できる
別用途への転換が可能

など、現在のPLには表れていない価値が残っている可能性があります。

 

そのため買い手によっては、

「今いくら儲かっているか」より、「取得後にいくら稼げる施設へ変えられるか」

を重視します。

これが、ホテル・旅館の再生型M&Aです。

 


2. 最も重要なのは「赤字か」ではなく「なぜ赤字なのか」

赤字施設を評価するとき、最初に確認したいのが赤字の原因です。

例えば、同じ年間3,000万円の営業赤字でも、原因によって投資判断は大きく異なります。

改善余地がある可能性の高い赤字

例えば、

・ADRが周辺競合より低い

・OTA運用が十分にできていない

・公式サイトからの直接予約が少ない

・レベニューマネジメントができていない

・稼働率が低い

・人員配置が過剰

・業務が非効率

・修繕不足によって商品力が落ちている

・客室構成が現在の旅行需要に合っていない

・飲食部門など一部事業が赤字

・オーナーの高齢化等によって営業・マーケティングが止まっている

といった場合です。

 

こうした施設では、運営会社の変更、リブランディング、CAPEX、DX、価格戦略などによって改善できる可能性があります。

 

一方、

そもそも宿泊需要が少ない
アクセス条件が極端に悪い
建物の構造上、大規模な改善が難しい
必要CAPEXが再生後の価値を上回る
法令・許認可上の問題を解決できない

といった場合には、宿泊施設としての再生難易度は高くなります。

つまり買い手が見ているのは、

赤字額そのものではなく「赤字の質」です」。

 


3. 再生案件を買うのはどのような買い手か

黒字ホテルを購入する投資家と、赤字ホテルを購入する投資家は必ずしも同じではありません。

再生案件では、例えば次のような買い手が想定されます。

 

① ホテル・旅館運営会社

自社の運営ノウハウを投入することで、

ADR改善、OCC改善、コスト削減、OTA運用、直接予約強化

などによる収益改善を狙います。

 

② 不動産会社・デベロッパー

現在のホテル事業だけではなく、

土地・建物の価値、建替え、増築、用途転換、再開発

なども含めて評価します。

 

③ バリューアップ型投資家・ファンド

現状の収益ではなく、

取得 → CAPEX → 運営改善 → NOI・GOP向上 → 再売却

までを一つの投資戦略として考えます。

 

④ 異業種からの新規参入企業

不動産、飲食、小売、ウェルネス、観光、地域開発など、自社事業とのシナジーを目的としてホテル・旅館を取得するケースです。

 

⑤ 地域事業者・事業承継型の買い手

施設単体の利益だけではなく、

雇用維持、地域観光、温泉地の維持、地域ブランド

などを含めて事業承継を検討する場合があります。

 

したがって赤字案件では、

「誰に売るか」が非常に重要です。

黒字ホテルを探している一般的な投資家へ一斉に提案するのではなく、

「この施設の何を改善できる買い手なのか」

から逆算して買い手候補を設計する必要があります。

 


4. 買い手は赤字ホテルの「どこ」を評価しているのか

再生案件では、現在の営業利益だけではなく、複数の評価軸から投資判断が行われます。

特に重要なのが、

「改善後のGOP・キャッシュフロー」と「そこへ到達するためのCAPEX」

です。

 


5. 老朽化ホテルでは「いくらで買えるか」よりCAPEXが重要

老朽化したホテル・旅館で、買い手が非常に慎重に見るのが**CAPEX(設備投資・改修投資)**です。

例えば、

譲渡価格:1億円

だったとしても、

取得後に、

客室改修 5,000万円
屋根・外壁 3,000万円
給排水設備 2,000万円
空調設備 2,000万円
消防・防災 1,000万円
厨房・共用部 2,000万円

が必要であれば、取得価格だけを見て「1億円のホテル」と判断することはできません。

 

実際の投資判断では、

取得価格+取得諸費用+CAPEX+開業・再生費用+運転資金

まで含めた総投資額から、再生後の収益性を評価します。

 

つまり売主にとっては、

「建物が古いから売れない」

というより、

「買い手が必要CAPEXを把握できないため、価格を決められない」

ことが問題になるケースがあります。

修繕履歴、設備台帳、過去の工事内容、今後必要となる修繕の概算などを整理しておくことは、買い手の不確実性を減らすうえで重要です。

 


6. 赤字ホテルの価格はどう決まる?

赤字施設だからといって、一律に「土地値−解体費」で評価するわけではありません。

ここは非常に重要です。

再生型ホテルM&Aでは、大きく、

①現状の収益価値
②土地・建物の資産価値
③再生後の収益価値
④必要CAPEX
⑤負債・契約・法務リスク

を組み合わせて価格を検討します。

 

例えば、

現状GOP:▲2,000万円

でも、

運営改善と改修によって、

再生後GOP:5,000万円

が合理的に見込めるのであれば、買い手はその将来価値から逆算して取得可能価格を考える可能性があります。

 

考え方を単純化すると、

再生後の資産・事業価値
- CAPEX
- 再生期間中の赤字
- 取得・再生に伴うコスト
- 投資家が必要とするリターン
= 取得可能価格

という考え方です。

 

一方、宿泊事業としての再生が難しい場合には、

土地価格-解体費用等

をベースに評価されることもあります。

したがって、

「赤字ホテル=純資産法」
「黒字ホテル=収益還元法」

と単純に分けるのではなく、施設の状態と買い手の事業計画によって評価方法を変えることが重要です。

 


7. 「旅館業許可がある」ことだけで高く売れるわけではない

再生案件では旅館業許可も重要な確認項目ですが、

「旅館業許可そのものに○○万円の価値がある」

と単純に評価するものではありません。

旅館業については、2023年12月13日の改正旅館業法施行により、事業譲渡について、譲渡人と譲受人が事前に都道府県知事等の承認を受けることで、譲受人が営業者の地位を承継できる制度が設けられています。

 

しかし重要なのは、

その施設で取得後も適法に宿泊事業を継続できるか

です。

そのためDDでは、

旅館業
建築基準法
消防法
用途地域
過去の増改築
検査済証等の建築資料
自治体条例

などを一体として確認する必要があります。

 


8. 債務超過でもM&Aはできる?

赤字が長期間続いているホテル・旅館では、債務超過になっているケースもあります。

この場合も、

債務超過=M&A不可能

ではありません。

ただし、通常案件よりスキーム設計が重要になります。

例えば株式譲渡の場合、法人自体が存続するため、買い手は会社が抱える借入金や契約関係、潜在債務等も含めてDDを行います。

一方、事業譲渡では、譲渡対象となる事業・資産・契約等を個別に整理します。

ただし、

「負債を残して良い部分だけ売ればよい」

と単純に考えることはできません。

金融機関の担保、債権者との関係、譲渡代金の使途、税務、従業員、契約承継など、多くの論点があります。

特に金融機関からの借入が大きい施設では、

M&Aアドバイザーだけでなく、金融機関・弁護士・税理士等を含めて早い段階からスキームを検討すること

が重要です。

 


9. 再生案件で買い手が確認するDD項目

赤字・老朽化案件では、通常のホテルM&A以上に「取得後に想定外の費用が発生しないか」が確認されます。

特に確認されやすいのが以下です。

再生案件では、問題があること自体より、

「問題の全体像がわからないこと」

の方が買い手にとって大きなリスクになります。

 


10. 売却前に「直してから売る」べきなのか?

老朽化施設のオーナーから、

「少し改装してから売った方が高く売れますか?」

という相談もあります。

必ずしもそうとは限りません。

例えば5,000万円かけて改修しても、売却価格が5,000万円以上上がる保証はありません。

さらに買い手側が、

「全面改装する予定だった」
「ブランドを変えたい」
「客室構成を変更したい」

と考えている場合、売主が行った改修が買い手にとって不要になる可能性もあります。

そのため、売却を前提としているのであれば、

大規模なCAPEXを実施する前に、現状のままで市場へ出した場合の評価を確認する

ことをおすすめします。

 

一方、

法令上必要な対応
重大な漏水
営業継続に必要な設備故障
安全上重大な問題

などは別途対応が必要です。

重要なのは、

「直せば高く売れる」ではなく、「どこまで直すことが売却価格に寄与するのか」

を投資対効果で判断することです。

 


11. 少しでも良い条件で売却するために、売主が準備できること

赤字を短期間で黒字化できなくても、売却前にできることはあります。

むしろ重要なのは、

買い手が再生計画を作りやすい状態にしておくこと

です。

 

具体的には、

・過去3年程度の月次売上・費用を整理する

・ADR・OCC・RevPARを整理する

・部門別収支を可能な範囲で整理する

・修繕履歴をまとめる

・設備台帳を整理する

・今後必要なCAPEXを把握する

・旅館業・建築・消防関係資料を整理する

・土地・建物の権利関係を整理する

・借入金・担保状況を整理する

・従業員・取引先契約を整理する

こうした情報が整理されているだけでも、買い手は、

「何が問題で、いくら投資すれば、どこまで改善できるか」

を検討しやすくなります。

 


12. 売却を先延ばしにするほど、選択肢が減ることもある

赤字施設の売却で特に注意したいのが、

「もう少し経営を続けてから考えよう」

と判断し続けることです。

 

赤字が続けば、

現預金が減少し、修繕が後回しになり、建物がさらに劣化し、借入返済も厳しくなる可能性があります。

 

その結果、

「事業として譲渡する」

という選択肢があった施設が、

最終的には、

「廃業して不動産だけ売却する」

という選択肢しか残らなくなる場合もあります。

もちろん、すぐに売却すべきという意味ではありません。

重要なのは、

売却するかどうかを決める前に、「今ならどのような選択肢があるのか」を把握すること

です。

M&A、第三者承継、運営委託、賃貸、リブランド、資本提携、不動産売却など、状況によって複数の方法が考えられます。

 


まとめ|赤字ホテルで売るのは「現在の利益」ではなく「再生可能性」

赤字・老朽化したホテル・旅館だからといって、売却を諦める必要はありません。

買い手が評価しているのは、現在のPLだけではないからです。

立地
土地・建物
宿泊需要
客室数
温泉などの地域資源
運営改善余地
許認可・営業継続性
再生後の収益力

などを総合的に評価します。

そして、赤字案件で最も重要なのは、

「赤字かどうか」ではなく、「なぜ赤字なのか」。

その原因が買い手の運営力やCAPEXによって改善可能なのであれば、赤字施設が魅力的な再生投資案件になる可能性があります。

 

一方で、必要CAPEXが大きすぎる場合や、宿泊需要・建築・許認可等に重大な問題がある場合には、不動産売却や用途転換など別の出口を検討する必要があります。

だからこそ、

「うちの旅館は赤字だから売れない」

と最初から決めつけるのではなく、

現状維持・再生・M&A・不動産売却・用途転換のどれが最も価値を残せるのか

を比較することが重要です。

宿泊M&Aで売却するのは、過去の決算書だけではありません。

買い手が取得後にどのような価値をつくれるのか——その「再生可能性」も、重要な投資判断材料です。

 


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