2026年9月、国土交通省から2026年(令和8年)都道府県地価調査が公表されました。
全国の地価は上昇基調が続いていますが、その中でも特に目立っているのが、
白馬、富良野、野沢温泉、妙高、宮古島
といった観光・リゾートエリアです。
長野県白馬村の商業地「白馬5-1」は、
前年比+35.6%
となり、商業地の上昇率で全国1位。
白馬村の住宅地「白馬-2」も+31.3%となり、住宅地で全国2位となりました。国土交通省は白馬について、店舗・宿泊施設用地への旺盛な需要を上昇要因として挙げています。国土交通省
元原稿で整理されている富良野市北の峰町も+32.0%、野沢温泉村の商業地も+27.0%、妙高市の住宅地も+18.5%と、観光地が上位に並んでいます。
なぜ、人口規模では東京や大阪とは比較にならない地方の観光地で、これほど土地価格が上昇しているのでしょうか。
そして、この地価上昇は、
ホテル・旅館の価値やM&A価格にも、そのまま反映されるのでしょうか。
今回は2026年基準地価を入口に、白馬・富良野・ニセコ・宮古島などで起きている変化を、宿泊不動産・ホテル投資・M&Aの視点から読み解きます。
1.2026年基準地価で「観光地」が上昇率上位へ
2026年の都道府県地価調査では、全国的に地価の上昇基調が続きました。
特に観光地では、ホテル・店舗などの需要に加え、別荘・コンドミニアム、移住者、従業員住宅など複数の需要が土地に集中しています。
代表的な地点を見ると、その動きがよく分かります。

※国土交通省「令和8年都道府県地価調査」等をもとにINVESTEL編集部作成。元原稿掲載データ。
特に注目したいのが白馬です。
白馬5-1の商業地は、前年の+14.6%から+35.6%へ大きく加速しています。国交省も「店舗・宿泊施設用地に対する需要が旺盛」と説明しています。国土交通省
つまり、単に「観光客が増えている」というだけではありません。
観光需要の増加が、ホテル・店舗・住宅などの不動産需要へ波及し始めている。
ここが重要です。
2.なぜ白馬・富良野・ニセコなどの土地が上がるのか?
観光地の地価上昇を考えるとき、需要を一つにまとめない方が分かりやすくなります。
現在のリゾートエリアでは、大きく分けて3つの不動産需要が同時に発生しています。
① ホテル・旅館・店舗などの事業用不動産
インバウンドや国内観光客の増加によって、宿泊施設や飲食店などの事業用地への需要が高まります。
② 別荘・ヴィラ・コンドミニアム
富裕層や海外投資家などによるセカンドハウス、ヴィラ、コンドミニアム需要です。
③ 従業員住宅・寮
そして、宿泊投資の観点から見逃せないのが「働く人の住まい」です。
ホテルが増えれば、フロント、清掃、料飲、調理、施設管理など多くの人材が必要になります。
ところが、人口の少ないリゾートエリアでは、そもそも賃貸住宅の供給が十分ではありません。
その結果、
ホテルが増える
↓
雇用が増える
↓
従業員住宅が必要になる
↓
住宅・土地需要が増える
という二次的な需要も生まれます。
つまり、観光地では、
「泊まる人」だけではなく、「投資する人」「別荘を持つ人」「働く人」まで土地を必要としている。
この需要の重なりが、リゾート地の地価上昇を理解する重要なポイントです。
3.ただし「+35.6%」だけを見ると、地価を見誤る
ここで一つ注意したいことがあります。
地価上昇率と、土地そのものの価格水準は別物です。
例えば白馬5-1は、
32,000円/㎡・前年比+35.6%
です。
前年価格を逆算すると約23,600円/㎡。
したがって、1㎡あたりの上昇額は約8,400円です。

つまり、
「白馬は東京より土地が高い」
という話ではありません。
むしろ、
もともとの土地価格が低い地域に、新しい投資需要が流れ込み、価格調整が急速に進んでいる
と捉えた方が実態に近いでしょう。
投資家にとって重要なのは、上昇率ランキングだけを見ることではありません。
現在の絶対価格と、その土地からどれだけの収益を生み出せるのか。
ここまでセットで考える必要があります。
4.観光地の地価上昇=ホテル・旅館の価値上昇ではない
ここがINVESTELとして最も重要だと考えるポイントです。
周辺地価が30%上昇したからといって、
ホテル・旅館の売却価格も30%上昇するわけではありません。
宿泊施設には、
「不動産」と「宿泊事業」
という二つの価値があります。
例えば同じ土地価格のエリアにある30室の旅館でも、
一方はADR20,000円・低稼働・赤字。
もう一方はADR50,000円・高稼働・安定したGOPを生み出している。
この2施設が同じ価格で評価されるとは限りません。
ホテル・旅館を評価するときには、
土地・建物
ADR
OCC
RevPAR
GOP・NOI
将来CAPEX
ブランド
運営体制
許認可・法令適合
契約条件
出口
などを総合的に見る必要があります。
したがって、基準地価は宿泊施設の価値を考える重要な情報ではありますが、
「地価上昇率=ホテル価値の上昇率」ではない。
ここを区別することが重要です。
5.むしろ注目したいのは「土地価格と宿泊収益のギャップ」
では、なぜ白馬や富良野のようなエリアに投資家が注目するのでしょうか。
一つの見方として重要なのが、
「土地価格」と「宿泊事業から生み出せる収益」の関係
です。
例えば、土地価格そのものは東京・大阪の中心部より大幅に低い。
一方で、国際的なリゾートとして認知され、高いADRを実現できる施設が存在する。
この状態では、
土地価格だけでは説明できない宿泊事業価値
が生まれる可能性があります。
つまりホテル投資では、
「土地が安いか、高いか」だけではなく、その土地でどの程度のADR・稼働率・利益を作れるのか
を見る必要があります。
特に高級リゾートや旅館では、客室数が少なくても、高ADRと付帯収益によって大きな事業価値を形成できる場合があります。
これは、前回解説した「1室あたり取得価格」ともつながる考え方です。
6.地価上昇は、ホテルオーナーにとって「追い風」だけではない
土地を保有しているオーナーにとって、地価上昇は資産価値の面ではプラスです。
しかし、ホテル・旅館経営という観点では必ずしも良いことばかりではありません。
特に注意したいのが、
人件費と従業員住宅です。
土地価格や住宅需要が上昇すれば、従業員が住む賃貸住宅の確保も難しくなる可能性があります。
リゾートホテルの場合、
「採用できるか」
だけではなく、
「採用した人が住める場所を確保できるか」
まで運営上の重要な問題になります。
これは宿泊施設M&Aでも同様です。
買い手がホテルを取得しても、必要なスタッフを確保できなければ、想定していた客室数を販売できない可能性があります。
そのため、リゾート施設のDDでは、
従業員寮の有無
寮の所有・賃貸
賃貸借条件
収容可能人数
外国人スタッフの住宅
通勤手段
なども確認対象になります。
言い換えれば、
リゾート地では「従業員が住める環境」そのものが、宿泊施設の運営競争力になり得る
ということです。
7.インバウンドは減った?「全国平均」だけで観光地を判断しない
2026年8月の訪日外客数は3,098,900人。
前年同月比では9.6%減となりました。
一方で、韓国・マレーシア・メキシコなど14市場では8月として過去最高を記録し、イタリア・スペインでは単月過去最高となっています。JNTOは、一部市場の減少要因として東南アジアの需要が落ち着く時期であること、航空便の減便、台風による欠航などを挙げています。日本政府観光局
ここでも重要なのは、
「訪日客が前年比で減った=地方リゾート需要も減った」
とは限らないことです。
宿泊投資では全国の訪日客数だけではなく、
どの国から来ているのか
どの地域へ行っているのか
何泊しているのか
どの価格帯のホテルを選んでいるのか
冬・夏で需要がどう変わるのか
まで見る必要があります。
白馬、ニセコ、富良野、宮古島では、それぞれ需要構造が異なります。
したがって、宿泊投資で重要なのは、
日本全体の観光市場を見る「マクロ」と、対象エリアを見る「ミクロ」を分けること
です。
8.沖縄では2027年から宿泊税導入。高ADR施設への影響は?
観光地を見るうえでは、需要だけでなく制度変更も重要です。
沖縄県では2027年2月1日から宿泊税が導入されます。
税率は宿泊料金の2%で、1人1泊あたり2,000円が上限です。
県と市町村があわせて課税する場合は、県0.8%・市町村1.2%となります。沖縄県官方網站
宿泊税は宿泊者が負担するため、税額そのものがホテルの費用になるわけではありません。
しかし、
宿泊者の総支払額
価格表示
徴収・申告業務
OTAとのシステム対応
などには影響します。
特に高ADRのリゾートでは、宿泊税を含めた総支払額を顧客がどう受け止めるかまで考える必要があります。
したがって、ホテル投資では現在のADRだけを見るのではなく、
将来的な税制・条例・運営コストの変化まで含めて収益をシミュレーションすること
が重要です。
9.売り手は「地価が上がったから高く売れる」と考えない
では、地価上昇エリアにホテル・旅館を所有しているオーナーは、何をすべきでしょうか。
最も避けたいのが、
「周辺の土地が30%上がったから、自分の旅館も30%高く売れる」
という考え方です。
むしろ、地価上昇をきっかけに、
不動産価値と事業価値を分けて整理する
ことをおすすめします。
具体的には、
土地・建物の現在価値
直近3年間の売上・利益
ADR・OCC・RevPAR
GOP・NOI
修繕履歴と今後のCAPEX
従業員・寮
許認可・法令適合
運営体制
を整理します。
そのうえで、
不動産として売るのか
宿泊事業として売るのか
会社ごと株式譲渡するのか
を検討する。
宿泊施設では、売却スキームによって買い手も評価方法も変わります。
だからこそ、
「地価が上がったから売る」ではなく、「地価が上がった今、自分の宿の価値を再評価する」
という考え方が重要です。
10.買い手は「地価上昇率」ではなく、宿泊需要とのバランスを見る
買い手側も、上昇率ランキングだけで投資エリアを選ぶのは危険です。
例えば地価が上昇していても、
建築費が高い。
人材が採用できない。
従業員住宅がない。
競合ホテルが大量供給される。
季節変動が激しい。
といった状態なら、投資収益は想定ほど高くならない可能性があります。
反対に、土地価格が上昇していても、
ADRの上昇率がそれ以上
滞在日数が長い
高単価需要がある
供給制約が強い
通年化できる余地がある
のであれば、投資機会が残っている可能性があります。
買い手が見るべきなのは、
「土地が上がっているか」ではなく、「土地価格に対して、どれだけの宿泊収益を作れるか」
です。
11.INVESTEL視点|観光地を見る「5つの数字」
観光地への宿泊投資を検討するとき、INVESTELでは地価だけでは判断できないと考えています。
少なくとも、次の5つをセットで見ることが重要です。
① 土地価格
1㎡あたり価格と上昇率。
② ADR
どの程度の客室単価を実現できるのか。
③ OCC
年間を通じてどの程度稼働できるのか。
④ GOP・NOI
最終的にどの程度の利益・キャッシュフローが残るのか。
⑤ CAPEX
取得後にどの程度の改修・設備投資が必要なのか。
そしてリゾートでは、これに、
「人材と従業員住宅」
を加えて考える必要があります。
つまり、
地価 × 宿泊需要 × 収益力 × CAPEX × 運営体制
を総合的に見る。
これが、単なる「土地投資」と「宿泊投資」の大きな違いです。
12.売却・取得の判断は「出口」から逆算する
観光地の地価が大きく上昇している今だからこそ、ホテル・旅館の取得では出口も重要になります。
例えば、
既存旅館を取得
↓
改修・リブランド
↓
ADR改善
↓
運営体制の整備
↓
GOP改善
↓
キャッシュフロー安定
↓
次の事業会社・ファンド等へ売却
という考え方です。
重要なのは、
「地価がもっと上がるから買う」
という投資ではありません。
地価が横ばいになったとしても、
宿泊事業そのものの収益改善によって価値を高められる案件か
を見ることです。
これはホテル・旅館M&Aでも同じです。
買収後に何を改善し、誰に売るのか。
購入時点から「次の買い手」を考えることで、取得価格の上限も見えてきます。
まとめ|白馬+35.6%から考えるべきなのは「土地の値上がり」だけではない
2026年の基準地価では、白馬村の商業地が+35.6%となり全国1位。白馬の住宅地でも+31.3%となるなど、観光・リゾートエリアの地価上昇が鮮明になっています。国土交通省
しかし、宿泊投資・M&Aの視点で本当に重要なのは、
「地価が何%上がったか」だけではありません。
見るべきなのは、
その土地で、どれだけの宿泊収益を生み出せるのか。
そして、
その収益を取得後も継続できるのか。
です。
ホテル・旅館は、
土地 × 建物 × 宿泊事業 × 人材
が一体となった投資対象です。
だからこそ、
「地価が上がっている地域だから買う」のではなく、「地価に対して宿泊事業としてどれだけの価値を作れるか」を考える。
地価上昇は「答え」ではなく、地域の宿泊需要や投資マネーの変化を読み解くための一つのシグナルとして見ることが重要です。
ホテル・旅館・民泊の売却・購入なら「INVESTEL」
INVESTELは、ホテル・旅館・民泊など宿泊施設に特化したM&A・投資プラットフォームです。
宿泊施設の売買では、不動産価格だけではなく、宿泊事業の収益性、ADR・OCC、運営状況、許認可、CAPEX、従業員、事業承継、売却スキーム、買収後の運営まで総合的に考える必要があります。
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「観光地に保有する旅館・ホテルの価値を知りたい」
「地価が上昇している今、売却すべきか検討したい」
「白馬・ニセコ・富良野などで宿泊施設を取得したい」
「既存施設を取得して再生したい」
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